分厚いポリ塗装をラッカー塗装にリフィニッシュ

今回はG&LナチュラルのASATを、ラッカーでリフィニッシュの依頼です。このG&Lがまた厚い塗装をされていて古い塗装を剥がすのにひと苦労しました。リフィニッシュは、塗装するより塗装を剥がす方が大変ということです。それと出来るだけサイズを変えないように注意しながらサンディングしなくてはなりません。中古やヴィンテージのギターでたまにボディの削り過ぎか何かで、ボディ厚が薄くなっているリフィニッシュされたギターを見かけます。ひどいのになるとトレモロユニットの裏のブロックがボディより飛び出ているギターも中にはありますので、ストラトキャスターは特に気をつけましょう!

サンディング後

このギターは、アッシュ材なのでこのまま塗装すると木目の導管に塗料が入ってヘコみますので、ワイピングで導管を埋めます。いわゆるパテみたいなものです。これで導管が埋まって平らになります。その後塗料が染み込まないようにシーラーをスプレーガンで吹いていきます。

シーラー塗装

あとは、ラッカーサンディングを吹き、サンディングしてを何回かくり返し平らになったらこれで下地処理が完成。

ラッカーサンディング

ここまでできたら、次は色付けをしていきます。目標はフェンダーカスタムショップ56ストラトキャスターのホワイトブロンドフィニッシュです。

56ホワイトブロンド

レリック加工はしませんが、このカラーを目指します。

1回目

クリアーラッカーにホワイトを少し混ぜて調色して吹いていきます。

2回目
少し色付け

白過ぎるので、少しだけイエローステインを混ぜて耐食した感じにしてみました。あとは、クリアーラッカーを重ねて乾燥させます。

磨き

塗料が乾きましたので、水研ぎからしていき、コンパウンドで磨いて完成です。

ネック、パーツ取付

ネックとパーツを元に戻して弦を張り、サウンドチェックをしました。アンプで鳴らす前から、以前の塗料よりボディが鳴っているのに気づきます。以前の分厚いポリエステル塗装だと木の鳴りを抑えていて、この差がでるのだと思います。アンプで鳴らせば関係ないと思っている人がいると思いますが、アンプで鳴らしてもアンプから出てくる音に差が出ますので、ラッカーにリフィニッシュして体験してみてはいかがでしょうか?

フラットマンドリンのネックアイロン修正

トラスロッドが行き着いてもう回らない状態です。トラスロッドを緩めてフリーにしネックアイロン修正機で、ネックを逆反りになるようにブロックを調整します。温度とかける時間は様子をみながらやります。これは、温度を上げすぎて時間をかけすぎると、ネックが痩せるのでフレットの角がネックより出てきて手が引っかかってしまいます。ネックの木の性格にもより、すぐ曲がってしまう木となかなか曲がらない木がありますので、その時に応じて変えます。

ネックアイロン修正

アイロン修正は成功して、ネックは真っ直ぐになりましたが、フレットの所々減っていたのでフレットのすり合わせもしました。

フレット擦り合わせ後

ここまでやり、弦高を下げたセッティングができ弾きやすくなりました。

ネック折れ修理塗装込

ネック折れ

このギターは、ネックとヘッドの間にヒビが入っていますが、弦を張った状態でチューニングすると、このヒビ割れの隙間が開いてきます。接着圧着したあとネック裏の塗装が剥がれているので、同色での塗装も依頼を受けました。

写真は撮るのを忘れていましたが、このギターはネック裏にボリュートがあるので、専用治具(自作)で接着圧着です。2〜3日乾かして専用治具を外しネック裏、ヘッド裏の塗装を剥がします。

下地塗装

綺麗に塗装が剥がれたので下地塗装からしていきます。ヘッド裏にシリアルナンバーとMADE IN USAの刻印があるので、消えないように気をつけます。色はシースルー系のワインレッドですが、古っぽいダーク系にしてボディの色に合わせます。

色付け1
色付け2

色付けが終わったら、飴色クリアー塗装をして古っぽい感じにしていきます。その後クリアー塗装を何回か重ねて乾燥させます。

クリアー塗装

1週間乾燥後、水研ぎ、バフ掛けして完成!ボディが汚れていて光沢もなかったので磨いておきました。ここまでやるやり方だとネック折れはほとんど分からなくなります。

モカバースト・カラーにリフィニッシュ

最近のフェンダーの新色で、モカバーストというカラーがあります。このカラーにリフィニッシュしてほしいという依頼がきました。自分もこのカラーに興味があり、調べたらこのカラーのギターをレビューした動画がありましたので、それを見て解読しました。

Fender American Ultra Jazzmaster Mochaburst

下地処理をした後、ウレタン・シャンパンゴールド塗装。

シャンパン・ゴールド

乾燥後、ゴールドラメをふりかけて、バーストの部分はマホガニーステインをウレタンクリアーに混ぜ吹きます。後は、トップコートのウレタンクリアーを重ねて塗って完成です。

モカバースト

配線でもこちらは近代的からオールド配線に!

最近のギブソンレスポールスタンダードは、レギュラー品はコイルタップ、シリーズ・パラレルスイッチなどいろいろな装備が付いて遊べます。が、音質に関しては音やせをして、音が通らない感じがします。ご依頼主様もそう感じていて持ち込まれました。

before

この近代的なアッセンブリーを昔ながらの‘50s配線に交換します。このアッセンブリーは基板にカプラー接続なので、カプラーを外してポットのナットを外せばハンダごてを使わず簡単に取り外すことができます。

ジャック部
アッセンブリー基板裏
アッセンブリー基板表
ポット、コンデンサー

新しく付けるポットとコンデンサーとアース線はギターの外でハンダ付けします。ある程度方向や形が決まったらボディのキャビティー内に納めポットをナットで締めます。あとは、元々のピックアップの配線がカプラーなので、線を剥いてポットにハンダ付けします。あとトグルスイッチからの配線はメタルワイヤーで新たに配線し直します。それをポットとアウトプットジャックにハンダ付けします。ハンダは全てケスター44。

トグルスイッチ配線
after

出来上がってサウンドチェックしました。前より音が太くなり、音抜けもよくなりました。今回も裏蓋を閉めてしまえば、わからないかもしれない箇所ですが、この隠れた所が大事だと思います。音を出せば変わったことが分かると思いますのでご安心を!ご依頼主様も満足いただけましたでしょうか?また何かございましたらよろしくお願いいたします!

民生ブラックトップレプリカへの道 最終章 配線編

長く連載しましたこの企画(依頼)も最終段階となりました。このギターはオーナーさんが中古で購入されたギターで、前から気になっていた所が配線みたいで、見るからに購入前のオーナーさんが自分でいじったような感じの配線でした。これを元のヒストリック配線に見た目綺麗に戻したいとのことです。性格的に見た目綺麗に仕上げるのですが、それにしてはピックアップの配線がパッツンパッツンで短いです。オーナーさんの了解を経てピックアップの根っこから長い新しいメタルワイヤーに交換です。

before

ハムバッキングピックアップの根っこからの配線交換は、まずピックアップを分解します。カバードなので、カバーとピックアップ本体がハンダ2ヵ所で止まってますので、このハンダをノミで切断してカバーを外します。そしてテープを剥がしポールピースのネジを緩め、ボビンをはずします。そうするとボビン下に配線のアースがハンダしてあります。こハンダを取りHOTのハンダも取り古い配線が外せます。あとはこの逆で新しい長い配線と交換しハンダします。細いピックアップのコイルを切らないよう慎重に!

ハンダ切断
切断後
古い配線外し
テスターチェック
カバーと本体ハンダ付け
配線交換後

ここまでできたら、あとはトグルスイッチからのの配線をボディに通して、ピックアップをボディに取り付けて、ポットにハンダしていきます。オーナーさんから理想の写真をもらったので、その通りに忠実に再現させてもらいました。

トグルスイッチ配線
ポット配線

いかがだったでしょうか?音も変わったと思いますが!ご依頼者様ありがとうございました。隠れて他人が見てもわからない所ですが、こだわることとそれを綺麗に仕上げるということは大事ですよね!何よりも気持ちが違うと思います。また何かございましたら宜しくお願いいたします。

全体の塗装より難しい部分塗装

部分塗装はその周辺の色と合わせて、いかにごまかすかにかかっています。

before
before

まずは、平らに研磨してラッカーサンディングやウレタンサンディングを薄く吹いて、その後サンディングしてから色をつけていきます。あとはクリアー塗装を何回かして、乾燥させます。乾いたら磨いて出来上がり!やっぱり色を合わせるのが難しいです。

after
after

民生ブラックトップレプリカへの道 第四章 ブリッジ編

民生氏のブリッジを見るとビグスビートレモロ使用時のチューニングの狂いを抑える為に前回交換したロック式ペグと、あとローラーブリッジに交換してありました。でこのローラーブリッジは、今では入手困難なグレッチ製のブリッジで、依頼者さんも苦労して手に入れたみたいです。ローラーブリッジ本体をギブソンブリッジと交換するだけですが、民生氏のギターの写真を見るとサムナットがギブソンと比べると大きいではないか!ということで、サムナットも変えようと思ったら、ガバガバ!これはスタッドごと交換しないとなりません。ギブソンのスタッドを抜いて、穴の径を広げてグレッチというか国産のスタッドをねじ込みます。

スタッド穴
グレッチスタッドとサムナット

これで民生氏のギターにまた近づきましたね!チューニングの狂い少なく安定感抜群!弦高調整もしやすい!

民生ブラックトップレプリカへの道 第三章 ペグ編

‘50sヴィンテージタイプのギブソンは、元々クルーソンペグが付いています。ビグスビートレモロを付けたギターですと、チューニングの狂いに悩みます。そこで、チューニングの狂いを少なくするのにペグをロック式のペグに交換します。このギターのオーナーさんが選んだロック式ペグは、ゴトー製シャーラータイプのマグナムロックです。クルーソンタイプからシャーラータイプなのでポスト穴を削って広げます。9.9mmドリルビットを使います。

ペグ穴広げ

あとは新しいペグを取り付けます。これでアーミングした後のチューニングが狂いにくくなりました。

マグナムロック装着後
マグナムロック装着後

民生ブラックトップレプリカへの道 第二章 塗装編

お待たせしました。前の塗装が全部剥がれて、生地の表面に傷やへこみを確認します。この時点で傷やへこみがあると、いくら塗料を重ねても傷やへこみは残ってしまうので、生地の表面を良く見たり指で触って感触を確かめます。

生地

塗装は木の材がメイプルなので、まずシーラーを吹きます。1回吹いて乾燥させて、を繰り返します。

シーラー吹き

続いてラッカーサンディング吹き。今度は、吹いて乾燥させて表面をサンディングしてを何回か繰り返していきます。

ラッカーサンディング吹き

下地処理が完了したので、トップのバインディング部分をカーブに沿ってマスキングして、ブラックラッカーを吹いていきます。

ラッカーブラック吹き

何回か重ねた後、バインディング部のマスキングを外し、少し古さを出す為、飴色クリアーラッカーを吹きます。

飴色クリアーラッカー

あとは、クリアーラッカーを吹いては乾燥させてを何回か繰り返していきます。

クリアーラッカー吹いて乾燥

1週間自然乾燥させたら水研ぎです。表面をあまり平らにしないように軽く#1000からかるく磨いていきます。

水研ぎ後

水研ぎを#2000、#3000と済んだら、バフがけ、コンパウンド磨きと仕上げていきます。

コンパウンド磨き

このくらいの輝きがでたら完成です。ゴールドトップからブラックトップにかっこよく仕上がったと思います。長らくお待たせしました。奥田民生氏が愛用しているモデルに近づけました。

ブラックトップ完成