スラッシュ愛用Jessicaのレプリカ製作

このプロジェクトは1年前から始まりました。スラッシュ愛用の88年製レスポールスタンダードJessicaを再現して欲しいという依頼です。あまり資料がなく見えない所は想像で、資料でわかる所は忠実に再現をこころがけました。本人の物はかなりハードレリックなので、思いきってやりました。あとカラーの再現も基本サンバーストで、オレンジ色に焼けた感を出すのに考えて調色しました。

このギター元々の色はワインレッドで、このトップの塗装剥がしから始めました。

before

塗装はまず、薄いブラウンを基調としたサンバーストを塗りました。サンバーストはあまりサンバーストをハッキリさせない感じですね。本人のギターもトップがスリーピースですので、スリーピースがハッキリするように、メイプルの繋ぎ目を片方だけマスキングをして濃くしました。

サンバースト塗装
weather check
weather check

バインディングもクリアーが色焼けたした感じを出す為、全体を飴色クリアーを吹きました。この飴色クリアーを吹いて最終的なカラーになるように計算して色重ねをしないとなりません。

ウエザーチェックは現物の写真を頼りに、クリアーのマスキングシートでテンプレートを作りその線に沿ってカッターでクラックを付けていきました。

aged top

焦げや傷や打痕は特殊工具を使い、現物のように付け、塗装の一部を剥がし濃い色のステインで木に染み込ませました。

aged back

バックのバックル傷やネック裏は、かなり広範囲に塗装部を剥がしました。

aged back
slash jessica
slash jessica

slash jessicaの完成です。現物にかなり近づけたと思います。NETを見るとjessicaのレプリカは色々と出ていますが、それらよりも近いのではないのでしょうか。

消さないシリアルナンバースタンプ

ギブソンのカスタムショップ製ビンテージタイプのギターは大体シリアルナンバーをスタンプで打って、その上にクリアー塗装をしています。リフィニッシュの場合前の塗装を剥がしますが、その際サンディングをしますとシリアルナンバーが消えてしまいます。これを消さないで残せます。

シリアルナンバー

ご依頼のギターは、オールブラックのスタンダードで、ヘッドの表とトップのみブラックを残しそれ以外をナチュラルにするリフィニッシュです。ヘッド裏のシリアルナンバーはホワイトスタンプです。まずシリアルナンバー周りの塗装を剥がします。できるだけ数字の際まで削ります。

シリアルナンバー残し

目止めを塗った後、シリアルナンバーの数字だけ盛り上がっていますので、段差が無くなるまでサンジングシーラーを吹いてはサンディングしてを繰り返して、平坦にします。

サンジングシーラー吹き

その後は、クリアーラッカーを重ねて、磨いて出来上がりです。今回はナチュラルカラーで、シースルー系カラーでしたらシリアルナンバーは残せますが、潰しのカラーにリフィニッシュだと残念ながら消えてしまいます。

クリアーラッカー吹き

究極のヴィンテージ・サンバースト塗装

最近では、メールでのお問い合わせも増え、大体はメールのやり取りで、遠方から修理やカスタマイズや塗装の楽器が送られてきます。中には北海道からのお客様もいます。で、今回のご依頼も遠方からのお客様で、1回足を運んでいただきご来店してご依頼内容を話していただきました。大変ありがたい限りです。ご依頼内容は、トップのみのリフィニッシュ、エイジド加工、ウエザーチェックを入れるという内容です。送られてきたギターは以前リフィニッシュ、エイジド加工、ウエザーチェックを入れてもらったギターみたいなのですが、色が明るすぎてあまり気に入っていなかったようです。この写真の感じも悪くは無いのですが、お客様の理想のカラーがあったのです。

Before

その理想のカラーは、The Beauty Of The Burstの本に載っているこのカラーです。ウー渋いですね〜。わかりました、このカラーや雰囲気に近づけてみます。

見本写真

この見本のギターは’59なので、本の出版の時期からすると50年ぐらいは経っています。しかも綺麗で状態が良いので、自然の劣化だけでここまで保たれているのではないかと思います。自然の焼けや変色も考えて調色していきます。虎木の模様部分は濃いオレンジに近い茶色なので、生地に調色したステインをすり込んで行きます。

調色したオレンジステイン塗り込み

乾いたらサンディングをして表面だけ色を取ります。すると虎の模様部分だけ色が残ります。

サンディング

次に黄色のステインを混ぜたシーラーを塗ります。これで、虎の模様がはっきりしてきます。

シーラーに顔料イエローを混ぜスプレー

次に茶色ステインでバーストを吹いて行きます。見本のバーストをイメージして吹きました。ヴィンテージぽさを出す為と、ボディサイドとバックとネックはすでに光沢があまり無かったので、トップコートのクリアーは半艶けしを選びました。

バースト、トップコート塗装

ウエザーチェックは、カッターでの横スジと急冷のランダムなひび割れをブレンド。傷などのエイジド加工は、あまりヘビーに入れなくライトな感じで入れました。

エイジド処理&ウエザーチェック施工

The Beauty Of The Burst完成です。イメージ通りにできご依頼のお客様も喜んでいただきました。ご依頼いただきありがとうございました。

究極のヴィンテージ・サンバースト完成

ギターキット塗装〜組み上げ

今回は、ギターキット仕上げまでのご依頼です。ボディ、ネック、指板フレット、バインディングが付いて形になっている未塗装の状態で送られてきました。パーツも一緒に届いたので塗装前に合わせてみましたが、ペグ、ジャック、ポットの径が合わない為塗装をする前に、穴を広げました。この未塗装のギターは、中国製で、やはり荒削りなので、表面を#320でサンディングします。これをしておかないと、仕上がりに影響がでます。

木部サンディングしてマスキング

指板にマスキングをして、目止めをして、今回はウレタンのサンディングシーラーから吹きます。乾いたらサンディングしてを何回か繰り返して表面の凹凸がなくなったら、クリアーにピュアイエローを混ぜ吹きます。

ウレタン・クリアーイエロー塗装

トップのサンバーストは、オレンジ系の茶色を作り吹きます。

調色したブラウンサンバースト塗装

ボディ・サイド、ボディ・バック、ネック、ヘッド裏も同じ色で吹きます。ボディとネックの材質が違う為、色が微妙に違うように見えます。

サイド・バック・ネックも調色したブラウンに塗装

塗装を乾燥させて、磨きにかかります。磨いて綺麗になったら、フレットは初めからガタガタでボコボコでしたので、擦り合わせもします。パーツを組み込み調整をして出来上がりです。これで、半分は日本製になりました。

完成

マルチレイヤー塗装エイジド加工

最近ちまたで流行りのマルチレイヤー塗装にリフィニッシュの依頼が来ました。塗装後はエイジド加工をしてVintage風に仕上げてほしいとのことで、スタートです。

マルチレイヤーとは、出来上がったカラーの上から重ねて違うカラーを塗るやり方です。昔、F社で塗装の不良や、木目が悪いなどの理由でそういったギターが存在していたみたいです。塗装のやり直しは、一回塗装を剥がさないとならないので、マルチレイヤーにした方が、効率が良く早いです。新品のギターの出来あがりはマルチレイヤーなのかはわからないが、使っていくうちに塗装が剥がれて初めて中のカラーが顔を出して分かります。最近流行りのマルチレイヤーは、はじめから中のカラーを見せるお洒落な感じを出しています。それを出すバランスや量は施す人のセンスにかかってると思います。

Before
表面を研磨
下地処理後イエロー外側ブラックと内側オレンジでその上にラッカークリア塗装
サンバーストの上にラッカーホワイト塗装
クリームカラー塗装
エイジド加工表
エイジド加工裏
マルチレイヤー・エイジド完成

ミニハム用ピックガード製作

ラージピックガードのSG Classicは、元々ピックアップがP-90タイプなので、これをよりパワーがあって音抜けが良いミニハムバッカーに交換のご依頼が来ました。ご依頼者はファイヤーバードのようなサウンドが好みのようで、マホガニーにミニハムバッカーなのでまさしくそのサウンドは出せると思います。(違いは形とリバースのファイヤーバードがスルーネック)

で、SGのミニハム用ラージピックガードを探しましたが有りません。なので、型から製作することにしました。P-90よりミニハムバッカーの方が小さいので、ボディのザグリ加工は無しで行けます。まずはルーターのガイドになるMDFボードで型を作ります。

ピックガードの型

ピックガードの型にピックガードの材料を両面テープで貼り、型より少し大きめにカットします。

ルーターテーブル

ルーター用ベアリング付ガイドビットを使い、ルーターテーブルの上でピックガードをカットしていきます。ルータービットはかなり高速に回って削って行きますので、危険です。

ピックガード面取り

周りの面取りが終わりピックガードの形になりました。後はブリッジポストとピックアップスクリューとピックガード止めスクリューの穴を開けます。

左オーダーピックガード右オリジナル

ピックガードを型から剥がして出来上がり。

SG mini hum

出来上がってサウンドチェックをしましたが、まさしくファイヤーバードサウンドで、ミドルから上が気持ち良く抜けてドライブします。

エースフレーリー仕様!3PU化

70年代に衝撃的なデビューをしたバンドのひとつにKISSがいます。アルバムの中でもKISS ALIVEがおすすめの1枚です。その元祖リードギタリストがエースフレーリーで、彼のトレードマークギターといえば、3ピックアップのチェリーサンバーストレスポールカスタムですね。エースフレーリー好きギタリストは、普通のチェリーサンバースト2PUレスポールカスタムを購入して、フロントとリアPUの間にザグリを入れて3PU仕様にします。今回もそんな狙いで改造の依頼を受けました。ザグリはピックアップで隠れて見えなくなりますが、仕上がりをきれいにする為、テンプレートを使いルーターでザグリます。

ハムバッキング用テンプレート
ルーターでザグリ

ピックガードも3ピックアップ用にカットします。

ピックガードカット

エースフレーリー本人のレスポールは、フロントとミドルのピックアップがダミーみたいですが、全部のピックアップが使えるようにとトグルスイッチも3ピックアップ用に変更。

3PU用トグルスイッチ
エースモデル

モカバースト・カラーにリフィニッシュ

最近のフェンダーの新色で、モカバーストというカラーがあります。このカラーにリフィニッシュしてほしいという依頼がきました。自分もこのカラーに興味があり、調べたらこのカラーのギターをレビューした動画がありましたので、それを見て解読しました。

Fender American Ultra Jazzmaster Mochaburst

下地処理をした後、ウレタン・シャンパンゴールド塗装。

シャンパン・ゴールド

乾燥後、ゴールドラメをふりかけて、バーストの部分はマホガニーステインをウレタンクリアーに混ぜ吹きます。後は、トップコートのウレタンクリアーを重ねて塗って完成です。

モカバースト

配線でもこちらは近代的からオールド配線に!

最近のギブソンレスポールスタンダードは、レギュラー品はコイルタップ、シリーズ・パラレルスイッチなどいろいろな装備が付いて遊べます。が、音質に関しては音やせをして、音が通らない感じがします。ご依頼主様もそう感じていて持ち込まれました。

before

この近代的なアッセンブリーを昔ながらの‘50s配線に交換します。このアッセンブリーは基板にカプラー接続なので、カプラーを外してポットのナットを外せばハンダごてを使わず簡単に取り外すことができます。

ジャック部
アッセンブリー基板裏
アッセンブリー基板表
ポット、コンデンサー

新しく付けるポットとコンデンサーとアース線はギターの外でハンダ付けします。ある程度方向や形が決まったらボディのキャビティー内に納めポットをナットで締めます。あとは、元々のピックアップの配線がカプラーなので、線を剥いてポットにハンダ付けします。あとトグルスイッチからの配線はメタルワイヤーで新たに配線し直します。それをポットとアウトプットジャックにハンダ付けします。ハンダは全てケスター44。

トグルスイッチ配線
after

出来上がってサウンドチェックしました。前より音が太くなり、音抜けもよくなりました。今回も裏蓋を閉めてしまえば、わからないかもしれない箇所ですが、この隠れた所が大事だと思います。音を出せば変わったことが分かると思いますのでご安心を!ご依頼主様も満足いただけましたでしょうか?また何かございましたらよろしくお願いいたします!

民生ブラックトップレプリカへの道 最終章 配線編

長く連載しましたこの企画(依頼)も最終段階となりました。このギターはオーナーさんが中古で購入されたギターで、前から気になっていた所が配線みたいで、見るからに購入前のオーナーさんが自分でいじったような感じの配線でした。これを元のヒストリック配線に見た目綺麗に戻したいとのことです。性格的に見た目綺麗に仕上げるのですが、それにしてはピックアップの配線がパッツンパッツンで短いです。オーナーさんの了解を経てピックアップの根っこから長い新しいメタルワイヤーに交換です。

before

ハムバッキングピックアップの根っこからの配線交換は、まずピックアップを分解します。カバードなので、カバーとピックアップ本体がハンダ2ヵ所で止まってますので、このハンダをノミで切断してカバーを外します。そしてテープを剥がしポールピースのネジを緩め、ボビンをはずします。そうするとボビン下に配線のアースがハンダしてあります。こハンダを取りHOTのハンダも取り古い配線が外せます。あとはこの逆で新しい長い配線と交換しハンダします。細いピックアップのコイルを切らないよう慎重に!

ハンダ切断
切断後
古い配線外し
テスターチェック
カバーと本体ハンダ付け
配線交換後

ここまでできたら、あとはトグルスイッチからのの配線をボディに通して、ピックアップをボディに取り付けて、ポットにハンダしていきます。オーナーさんから理想の写真をもらったので、その通りに忠実に再現させてもらいました。

トグルスイッチ配線
ポット配線

いかがだったでしょうか?音も変わったと思いますが!ご依頼者様ありがとうございました。隠れて他人が見てもわからない所ですが、こだわることとそれを綺麗に仕上げるということは大事ですよね!何よりも気持ちが違うと思います。また何かございましたら宜しくお願いいたします。