ネックアイロン修正のご依頼

最近「トラスロッドを締め切っても、まだネックが反っている」、「トラスロッドが無く調整できないギターで反っている」などのネックに関するお困りの方からのご依頼が多いです。今まで何度か当工房のブログでネックアイロンの記事を載っけてからすごく増えていますね。ネックが順反りの場合10フレットあたりで、弦とフレットの距離が空いて弾きづらくなります。いわゆる弦高が高くなりますので、だいたいの方はブリッジのサドルを下げて弦高を低くします。このやり方ですと、10フレットの弦とフレットの距離は短くなりますが、最終フレットの弦とフレットの距離は10フレットあたりの距離より低くなるので、12フレットあたりから17フレットあたりまでで、ビビったりチョーキングをすると音がつまってサスティーンが無くなったりします。トラスロッド調整で反りが直らない場合は、曲った木をネックアイロンを使い強制的に熱を加えて逆に曲げて固めていきます。何日か経ってネックアイロンを外すと圧がなくなり多少戻りがあるので、そのことも計算に入れてやります。

写真は今までのネックの反りにネックアイロンで修理した実例の中のほんの一部です。実際にはこれ以上ありますが、順反り、逆反り、1弦側と6弦側の反り方が違うねじれ、ボディの付け根から曲がる元起き、とネックにはいろいろと不具合があります。このような状態がおきても決して諦めないでください。直りますというより、直します。

ネックアイロン

ネック元起きネックアイロン

元起きとは、アコースティックギターによく見られ、ネックの付け根(ボディとネックが接合している部分)からくの字に純反りしていることを言い、12フレット付近の弦高が高くなります。この状態ですと、トラスロッドの調整では直らないです。そんな時にネックアイロンの出番です。アコースティックの元起きの場合はエレキギターの時と違うクランプを使います。

ネック元起き修理

締めるトルクや温度と時間は、そのギターの状況によって調整します。

弦を張りっぱなしにして、そのまま放置状態にしているギターが比較的にネックの元起きが起こりやすいみたいです。このようなことが起きましたら、ご相談ください。

ロッドいっぱいにネックアイロン

これ以上トランスロッドが回らないぐらいいっぱいなのに、まだネックが順反りしているギターをよく見ます、今回修理依頼のギターもその悩みを抱えていた方からです。こういったギター は10フレット辺りで弦高が高くなっているので、すごく弾きづらいですね!お客様も諦めていた時、エムジーズが以前にも投稿したブログの記事(ネックアイロンの出番)を見てこんな状態でも直せるんだと思って、ご依頼されたみたいです。

ネックアイロン

トラスロッドをフリーにして、ヒーター内蔵のネックアイロンをセッティングします。この時にネックの一番反っているところを頭に入れて、両端に置くスペーサーの高さとU型クランプの位置と締め具合とヒーターの温度調節などを調整してやります。この辺は経験がモノを言う作業です。

下がった弦高

トラスロッドをフリーにしてから、ネックを逆反り状態にして矯正するので、ネックアイロンを外した時の戻りも考えてやります。ネックアイロンを外した時にほぼストレートになったので、成功です。弦を張った時に、弦の張力でネックが少ししなるのでトラスロッドを締めて完成です。これでトラスロッドが効くようになります。弾きやすさが戻りました。

フラットマンドリンのネックアイロン修正

トラスロッドが行き着いてもう回らない状態です。トラスロッドを緩めてフリーにしネックアイロン修正機で、ネックを逆反りになるようにブロックを調整します。温度とかける時間は様子をみながらやります。これは、温度を上げすぎて時間をかけすぎると、ネックが痩せるのでフレットの角がネックより出てきて手が引っかかってしまいます。ネックの木の性格にもより、すぐ曲がってしまう木となかなか曲がらない木がありますので、その時に応じて変えます。

ネックアイロン修正

アイロン修正は成功して、ネックは真っ直ぐになりましたが、フレットの所々減っていたのでフレットのすり合わせもしました。

フレット擦り合わせ後

ここまでやり、弦高を下げたセッティングができ弾きやすくなりました。